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クラシックギター奏者、作・編曲家として活動している小関佳宏のブログ
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今日は、いわき市立草野心平記念文学館さんにお招きいただいて、ハッピーポケッツで演奏させていただいてきました。

「宮沢賢治をめぐって」ということで、
〈どんぐりと山猫〉〈よだかの星〉を中心にしたプログラムでした。
たくさんのお客様にお越しいただき嬉しかったです。
文学館の皆様、大変お世話になりました。
ありがとうございます。
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ギタリスト松田弦さんの新しいCD「エヴァーグリーン」に僕が編曲した〈からたちの花〉を収録してくれています。

いろいろあって、今日初めて聴きました。
通して聴いていると”深い気持ちになる”というのが僕の第一印象。


武満徹〜吉松隆〜渡辺香津美〜長岡克己〜LICANFENG〜佐藤弘和。


現代的な響きの曲から、徐々に和声が緩んでいき、巧みにアレンジされた日本歌曲、最後に弘和先生の〈Ever Green〉へ至るこの曲順には深いストーリーが感じられます。


まさに「芸術」とでも言うのでしょうか。


このジャケットからは全然想像できない内容もまた面白い。


じっくりと、音に埋もれて聴いていたい、そんな演奏、CDです。
是非、皆さんも手に取って聴いてみてください。



そして、
ライナーノーツには、書かれる筈もないことですが、大事なことなので、ここで書かせてもらいます。
今回の〈からたちの花〉の編曲は、ギター愛好家、故 石井健治さんの依頼によるものです。石井さんは生前、僕にたくさんのアレンジのご依頼を下さいました。あの依頼の数々はご自分の為と言いながら、僕を育ててくれる為だったと後から知りました。

この〈からたちの花〉もその一つです。
中でも一番やり取りが続いた曲でした。「そうじゃない」「まだ」「もう一回」と三回。
そうして出来上がったのが、この編曲でした。


それが、こうして、錚々たる作曲家、編曲家の方々に混ざって並んでいると思うと、ただひたすらに有り難く、石井さんに聴いて欲しかったです。


「石井さん、松田弦さんが弾いてくださいましたよ。」
ありがとうございます。
山下俊輔氏とのアルバム「Think」を9月30日にリリースし、同日に東京オペラシティ近江楽堂でのコンサートを皮切りに、10月5日昼に秋田市カフェブルージュ、夜は横手市Bar MONK、6日は山形市ノイジーダック、7日はいわき市アリオス小ホール、8日仙台市ほっぷの森ホールで2回公演。5日間で7公演、加えて9日には宮城県田尻でのエコキャンドルコンサートに出演させていただきました。


各会場での主催を引き受けてくださった皆様、お越しくださった皆様、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。


僕にとっては初めて自分が主となって行ったツアーとなりました。


こうして、ツアーをやってみると、普段では感じないことがたくさん見えました。自分の立ち位置や自分のパフォーマンス、自分の音楽の在り方や考え方などなど、「自分を見る」ことが多かった。


「初心にかえる」というか、若い頃バンドをやっていた時の様な気持ちになっています。


ギタリストの頭文字から「クラシック」を取り、アレンジャーという肩書きも取り、ギターを弾く人という役割からも抜けたところで、一人の「ミュージシャン」としての力量が問われている感じがしました。
もっと言うと、ミュージシャンでもなく、人間力でもあると思った。


クラシックギターってものが「知られていない」こと。自分のことを世間は「知らない」こと。
「知らない」ことを知った。


僕は自分のことを、「知られている」と思っている訳ではないし、有名だとも思っていない。
僕は自分のやりたいことをやりたいようにやって来ただけで、そういう事を意識しないでやってきた。


相手は「知らない」ということを意識するようになると物の見方はずいぶん変わる。


このツアーを経て、初心にかえり、
自分を枠から外して、一から新しく世界へ挑んでみようと思います。
そう思うと、なおさら、
普段を支えてくれている皆さん、
今回ご協力くださった皆様、足を運んでくださった皆様が有り難くて仕方ないです。

本当にありがとうございます。
シンプルなこと。


僕はもともと、一日中家で映画やドラマを観てたいし、音楽を聴いてゆっくりギターを弾いていたい人間だ。
人に会うのはたまにでいいし、散歩したり畑のことをやっていたい。


それがなんだかここ最近、ずっと行動的だ。


金曜日から日曜日までに東京にいて、一日仙台に帰って、今日はまた朝イチで東京へ行き、そしてまた帰っている。


僕のどこにそんなエネルギーがあるのか?と自分でも不思議なくらいだ。


それが音楽の為であり、好きな音楽を聴いていれば、自然と力はムクムクと湧き上がってくる。


人と会って、練習をして、演奏をして、食事をして、会話をして、事を進めていく。


都会の真ん中で、少しの時間でも、会って話をすると、事は良い方に進む。
きっと、どんなに文明が発達しても、人間としてのこの感覚は残っていくだろうなぁと思うし、大切にしたい。


明後日から東北ツアー。


「人が人に、想いを楽器に乗せて演奏する。」


ずっと昔から続けられて来たこのシンプルなことを、みんなと一緒に愉しみたい。

今週末の9/22『佐藤正隆&小関佳宏ギターデュオコンサート』
及び9/23『佐藤弘和作品を楽しむコンサート』へ向けて、
ここに言葉を残しておきます。


僕が弘和先生に初めて会ったのは21歳の時でした。 現代ギター社GG学院のレッスン室でのこと。チェックのシャツを着て、スニーカーを履いていて、とても 普段着な印象。僕はかっちりとした作曲家たる身なりで現れるものだと想像していた。けれどもそんな想像 とは全然違っていた。とても話しやすく、穏やかだった。僕はその日の晩に先生にメールをした。先生の曲 がどんなに好きで、馬鹿みたいに毎日弾いていること、実際にお会いできてどれだけ嬉しかったか等、その 時の僕の持てる言葉を総動員してそれを伝えた。すると返信をくれて「作曲家冥利に尽きるよ」と書いてあっ たのを今でも覚えている。本当に偉ぶることのない、穏やかで優しい人だった。


レッスンの時間は本当に面白かった。テクニックのこと、曲の背景、作曲家のこと、和声的なこと、曲が 作られた時代のこと。先生はあらゆる視点から教えてくれた。先生が作曲家だからこその捉え方も感じられ た。そして僕は先生が見ている世界が好きだった。 レッスンの場所がGG学院から先生のご自宅になってからはますます面白かった。レッスンが3時間を超 えることはいつものことで、その他本来のレッスン以外のこともしてくれた。その頃まだ幼かった娘さんを 先生と一緒に保育園に自転車でお迎えに行ったり、娘さんが僕の似顔絵を書いてくれたこともあった。玉川 上水という水辺の緑地を散歩して、作曲した時のイメージを伝えたりしてくれたこともあった。レッスンの 後に飲み屋さんに行ったこともあった。あの時、先生が何気なく話していたことを何故いまこんなに自分は 覚えていないのだろうと思う。その面影があるだけで。
僕が現代ギター社で連載を担当するようになって1年が経った頃、編集部の人に聞いたことがある。「何 故、仙台にいる僕が連載させてもらえているんですか?」と、すると、「言うなって言われてたけど、「弘 和先生に「小関をよろしく」と言われたんですよ」と。先生は本当にそういう人だ。言葉よりも実践。その 時のレベルに合わせて現場を与えてくれていた。そうやって後になってから気付くこと、知ることばかり。 盛岡へ一緒にコンサートへ出かけた時のこと。コンサートの翌日に岩手大学のギター部を訪ねたことがあっ た。先生は部室で学生がリクエストした曲を全て暗譜でサラリと弾いてみせた。昼食を学食で食べることに なり、注文したメニューを待っている時、先生はおもむろに五線譜と鉛筆を出して音符を書き始めた。その 時思いついたメロディーを書き留めていたのだ。しゃしゃっと、数分で。 先生は作曲の時は、頭の中で完成したらそれを五線譜に落とすのだそうだ。パズルゲームと推理小説が好 きで、それは作曲のトレーニングになるのだとか。


僕が東京へ行き、先生に会う度に誰かに会わせくれた。その方々とのご縁が生まれ、今では一緒に様々な 活動をさせてもらうようになった。一緒に自転車に乗ってくれたことも、散歩したのも、小さく見えるよう な一つ一つのことが音楽に結びついている。


結局、先生がどうやって作曲していたのか、それは今もわからないままだ。「作曲の仕方」の分かりやす い方法なんてものはたぶん存在しないのだ。実践あるのみ。僕が日々、作曲をしていて残っているのは先生 のその作曲に対する姿勢。先生は人から見えないところでずっと戦っておられたのだと思う。僕はその「姿 勢」のほんの一部を垣間見ることができただけでも十分だ。言葉で教えれるものではないし、やはり「実践 あるのみ」なのだから。


僕は先生がいなくなってから空を見上げることが多くなった。今になって話したいこと。見てもらいたい もの、聴いてもらいたいものがいっぱいある。でも、音楽をやっていて良かった。音は空へ届くような気が するから。この空の下、僕はこれからを生きていく。ギターを弾いて、作曲をして、次の時代をみんなと一 緒に創っていきたい。 

小関佳宏


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