「乍」

明日はミネハハさんとのコンサート。
今日は東京へ移動して午後からずっとリハーサル。

いろんな作業もしながらの合わせ。

この感じがミネハハさんらしい。
他のアーティストとのリハーサルは時間を決めてがっちり、きっちりやることが多い。
10年前のミネハハさんの事務所にいた修行時代はこの時間をオーデションと呼んでいた。

生活の中に音楽があって、オン•オフの境目がない。同じ空間の中にいて、ギターを弾くと歌を歌い、違うところがあればそこを修正していく。
それは細部に至る。

いつの時でも、本番までの時間は限られている。
裏で練習しようという甘い考えは通らない。
その場で、やる。
やんわりとした空気の中に、ぴーんとした緊張感が常に同居している。

それが昔は嫌だった。
今は嫌じゃない。
むしろありがたい。

そんなことをずっとやっていると
頭の中が洗練されてきて、音楽の喜びみたいなものだけがムクムクと湧き上がってくる。
言い過ぎだけど、結局、歌とギターで、人と人。
シンプルになる。

そういうモードに切り替わると、ふと、自分は旅人だったことを思い出す。
ここ数年、五線譜の上に僕の意志を乗せているけれど、僕は足で歩き、旅をして、人に会い、ギターを弾いて一年のほとんどを過ごしていた日々があったことを。

自分の中の言葉が動き出す。

実は何者にも縛られてはいないことを。

乍＝ながら